真面目なOLの裏顔(1話)

先ずは自己紹介だな。
俺は亮介、27歳、地元ではそれなりの規模の会社で法人営業をしている。
営業成績は真面目にやってないから平均よりは良いが取り立てて優秀って事はない。
そんな俺の特徴は自分で言うのもなんだがとにかく女にモテる事だ。
外見にはいつも気を使い、トークにも自信がある。
マッチングアプリに夜のクラブ、時には路上ナンパ、
色んな事をしてとにかく女を食いまくった。
トータルで60人は超えてると思う。
会社の女の子からも何回かアプローチされたことがあるけど全て断ってる。
職場でそんなことしたら辞めなきゃいけなくなっちまうからな。
でも、俺は去年の忘年会で過ちを犯し関係をもってしまった。
忘年会をやったのはチェーンの居酒屋だった。
で、俺の席の向かいに座ったのは同期入社の地味で大人しい田中さん。
黒縁メガネをかけて髪型はポニーテールで髪色は黒、
顔は歳よりは若く見える。
身体の成長は小柄でイマイチだな。
声が小さく大人しくて目立たない性格で、
俺も含めて会社のほとんどの人間が業務以外で話をした事はない。
ウチの会社はあか抜けない制服をOLに着る様に社則で決めてる古くかたい会社なんだが、田中さんにはよく似合っていた。
ちなみにどんな制服かというと、
黒無地のベストとスカートに白無地のワイシャツという創作でしか格好だ。
で、俺は横の奴らと結構楽しく話して盛り上がった。
田中さんをはぶったわけじゃないんだぜ。
巻き込もうと思って何度も会話をふった。
でも、リアクションが薄くて噛み合わなかった。
なに話しかけても
小さい声で振るえながら
「はい…」
とか
「そうです」
って、頷くだけで会話のキャッチボールが出来なかった。
だから自然と巻き込めない形になってしまった。
そんなこんなで一次会が終わり店の外に出て
希望者だけで二次会のカラオケに行くっていう流れになったんだが、
なんと、田中さんは店の中に置いてけぼりになっていた。
しかもそれに気付いたのは二次会希望者と帰る人間を分けて移動している途中でだった。
幹事と何人かがどうするか話し合い、
二次会に参加しない人間で迎えに行くということになった。
でも、帰る人間で幹二次会に行く人間と一緒に行動してたの俺だけだったんだよ。
……俺だけ他の帰る奴らと最寄り駅が違ったんでそうなってしまった。
で、田中さんを居酒屋まで迎えにいくと田中さんは座席で酔いつぶれて寝ていた。
そんなに呑んでる様には見えなかったけど。元々弱いのかな？
田中さんの手を肩にまわして店を出る。
このまま家には帰れないし、どうしようかと考えながら歩いた。
歩いてしばらくすると……
「……ん、んん」
田中さんが起き出した。
まだボーッとした様な感じだったが、解放される喜びで俺は安堵する。
「田中さん気がついたんだ。良かったあ、皆心配していたんだよ」
大きな声を出して明るい口調で話しかけた。
田中さんは俺をすわった目で見つめてきた。
普段はこんな表情をしない人なので正直怖い。
でも酔っ払ってこんな表情をする奴は沢山いる。
だから気にせず話しかけ続けた。
「駅まで歩ける？しんどかったら途中までおく…」
田中さんは言葉をさえぎり、俺の唇に唇を重ねてきた。
いや、口を突き出して勢いよく突進してきたって言った方が良いかも知れない。
驚いて固まっていると、今度は口内に舌を入れてきた。
歯を閉じて咄嗟にガードし、口内に侵入してこないようにする。
なので、歯茎や唇をベロベロベロベロ獣の様に舐めてきた。
テクニックとかムードとかそんなモノは一切なくただ欲望の発散だけを感じる情緒の無い舐め方だ。
しばらく舐められ続けたが、
周囲の目もありこのままでいるわけにも行かず身体を離す。
「はあ、はあ…」
口元が唾液塗れになった田中さんが、荒い息をあげて俺を見つめてきた。
「た、田中さんどうしたの？」
「抱いて…抱いてください！」
「え？なに？」
「ずっと好きだったんです！抱いてください‼」
大声で呂律のまわらない口調だった。
普段からは信じられない行動と発言に俺はたじろいだ。
田中さんの顔は歳の割には若過ぎるが、相当な上玉だ。
私生活ならいただきますをしているところだが、
職場でこんな関係になってしまっては後が気まずい。
それに街いく人達は俺達2人に痛い視線を向け続けている。
「分かった…取りあいず、落ち着いてどこか静かなところに行こうか」
とは言ったが、千鳥足で満足に歩けなかったので肩をかして歩いた。
向かった場所は会社だ。
適当に話しを聞いて、
酒飲ませて潰れた所で置いて帰るつもりだった。
途中コンビニによりビールやチューハイを何本か揃え、
暗証番号を入力し、鍵を開けて勤務先に入る。
ちなみに俺の勤務先はビルの4Fに間借りしているそれなりの規模の営業所だ。
そこで買った酒を飲みながら延々と田中さんの愚痴やコンプレックスを聞いた。
自分は勇気が無い、引っ込み思案な自分が大嫌いだ…
そんな事を学生時代からの様々なエピソードをおりまぜながら語られた。
俺はただただそれに愛想よく頷いた。
「亮介さんと席が向かい会ったから、今度こそ頑張ろうって思って。
でも、緊張してなにも喋れなくて…
それで気付いたら、凄い量のお酒を飲んでたみたいで……ヒックッヒック」
暴走から泣き上戸に変わったみたいだった。
俺は女喰いまくってるチャラ男なので酒には自信がある。
しかもだいぶセーブして飲んでいる。
田中さん酒は激弱の様だしこのままいけばまたすぐに潰れると思い潰しにかかる。
でも、急性アルコール中毒とかになると厄介なのでちょびちょび飲ませる。
「亮介さんから見て、私ってそんなに女として魅力ないですか？」
「うーん、そんな事はないよ」
「じゃあ、私とお付き合いをしてください」
「いや、それは…」
「そんな嘘をついたんですね、酷い…死にます」
いきなり窓を開けて飛び降りようとし始めた。
洒落にならん悪酔いだ。慌てて羽交い絞めにして止める。
「死なせてください！死なせてください‼」
そう大声を上げながら身体を暴れさせた。
大人しくさせるのはどうするか……俺は試行錯誤する。
…やっちまおう。そうすれば肉体的にも精神的にも疲れて
終わった後にすぐ眠たくもなるだろう。
こんな酔い方してるから俺とやっちゃったことは明日には絶対に覚えてないはずだ。
覚えてたとしても寝ぼけてたんだとか言って誤魔化せばいい。
今にして思えば安直な考えだが、俺はとにかく早く帰りたかった。
暴れ続ける田中さんに唇を重ねる。