高校2年になると、山口弥生が担任となり、会話は格段に多くなった。
「浩介君、これお願い」
もう「矢野君」とは呼ばなくなっていたが、誰も気にしなかった。古文を一緒に勉強する関係から、そんなことは当たり前と皆は受け止めていた。だが、「先生」と「生徒」であることには変わりない。そんな浩介が弥生を女として意識するようになったのは、偶然の出来事がきっかけだった。
蒸し暑くなってきた6月、浩介は授業中にお腹が痛くなり、保健室のベッドで寝ていると、「どうしてる?」と弥生の声が聞こえてきた。心配して様子を見に来たらしい。
まだ具合は良くないけど、先生の顔が見れる……浩介は嬉しくなったが、「大丈夫?」なんて声を掛けられたら、どうしよう? そう思うと、急に緊張してきた。こうなったら、目を瞑っていた方がいい……
そこに、「熱もないし、ちょっと疲れただけじゃない」と金子先生が仕切りカーテンを開ける音。そして、「あら、そうね……」と弥生の声。
来た……首をすくめて固く目を閉じる浩介だが、覚えのある香水の匂いに続き、僅かだが、弥生の息が頬に吹きかかると、じっとしているのが辛い。だが、その時、「ねえ、お願いしてもいい?」と金子先生の声が、それに「どうしたの?」と答えた弥生が急に離れていく気配。
あれ、どうしたんだ? 浩介は様子を確かめようと薄目を開けた。すると、弥生が仕切りカーテンから出ていくところだった。
緊張から解放され、浩介は「ふぅぅ……」と大きく息を吐いていたが、カーテンの向こう側では、金子先生から「校長先生に報告があるのよ。留守番してくれない?」と頼まれた弥生が「どうせ空き時間だから、いいわよ」と答えていた。そして、トントンと書類を揃える音がして、「じゃあ、お願い」と金子先生は出て行く気配がした。
静かになった保健室。カツカツと足音が近付いてくる。
(まただ……)
目を閉じた浩介は緊張して横たわったが、それと同時に、サアーと仕切りカーテンが開き、弥生が中に入ってきた。しかし、今度は顔を覗き込む気配もなく、その代わりにビッと袋を破る音がした。
何してんだろう?と浩介がまたも薄目を開けると、こちらに背を向けた弥生がスカートをめくり、やおらストッキングを下ろしていた。ビックリして、「あっ」と声が出そうになったが、それを何とか堪えたが、目の前には白いパンティに包まれたお尻が。もう興奮の極致。心臓がドキドキして、ペニスははち切れそうな程に硬くなってくる。
(まずいよ、まずいよ……)
浩介は夏掛けが尖らないように両手で股間を押さえるがズッ、ズッとシーツが擦れる音が大きくなる。だが、弥生は「フフン、フフフ……」と何やら歌を口ずさみながら、新しいストッキングに穿き替えているので聞こえない。
そこに「ありがとう」と金子先生が戻ってきた。またもや助かった。
「早かったわね」
そう答えた弥生はストッキングを上までたくし上げ、スカートの乱れを直すと、脱いだストッキングを無造作にベッド脇のゴミ箱に投げ捨て、仕切りカーテンから出ていった。
「『後で見ておく』だって」
「でも良かったじゃない、細かいことを言われなくて」
「そうだけど、せっかく報告に行ったのに」
金子先生と弥生はそんなことを話していたが、浩介の耳には入らない。音を立てずに、そっとベッドから降りると、ゴミ箱からそのストッキングを取り出した。思った通り、温もりの残えうそれには、弥生の匂い染みついていた。
浩介がそれをカバンにしまって持ち帰ったのは言うまでもない。
その日、学校を早退した浩介は自分の部屋に籠ると、弥生のストッキングを顔にあててオナニーをした。それも、続けて3度。勃起が収まらず、ペニスを扱く手が止まらなかった。
もはや弥生は〝冷血な媼〟でも〝清少納言〟でもない。浩介の性の対象になっていた。
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