「亜希ちゃん、明日の夜、監督会議なんだ。一緒に来て欲しいんだ」
「私が?」
「うん、そうだよ。経費のことも頭に入れておかないといけないから、是非一緒に来てよ」
理由はどうでもよかった。亜希子は横田と一緒に出掛けられるだけで満足だった。でも、心配は太一を一人マンションに残していくこと。しかし、太一にとって、ママが監督会議に出席することが秘かな自慢だった。
「ママ、今日、監督会議でしょう?」
「ごめんね。ご飯食べて、待ってて。早く帰ってくるから」
「大丈夫だよ。僕、みんなから聞かれるんだよ。『太一のママ、監督会議に出てるんだろう。どんな話をしてるんだよ?』ってね。でも、僕は言わないよ。『監督会議の話は内緒だって、ママは教えてくれない』と言ってるんだよ。」
太一がママの役目を知っていることよりも、そんな風に考えている、太一も随分と成長したんだなあと嬉しかった。
「あら、やだ。もうこんな時間なの。太一、ごめんね。ママ、監督会議に行ってくるから」
待ち合わせはコンビニの駐車場に午後6時だが、気が付いた時には既に午後5時50分を過ぎていた。亜希子が小走りに駐車場に行くと、もう横田は来ていた。
「亜希ちゃん、昔と同じだね。走ってこなくたって、僕はバスみたいに行っちゃわないよ」
「だけど、遅れたら迷惑かける……はあ、はあ、はあ……」
亜希子はそこまで言いかけたが、息が上がって言葉が続かない。
「あはは、もう高校生じゃないんだよ。大丈夫?」
横田が笑いながら背中をポンポンと軽く叩いてくれた。
「もう高校生じゃないんだよ」、何気ない言葉に忘れていた初恋の甘酸っぱい思い出が突然に蘇り、亜希子は胸がドキッとした。
健康的で浅黒く日焼けした顔、そして何と言っても人懐っこい笑顔。
やっぱり、亮ちゃんは優しくて……「うちの旦那とは違う」は飲み込んだ。
「亜希ちゃん、シートベルトしてよ」
監督会議が行われる文化会館まで車で10分ほどだが、亜希子は夢を見ているようだった。
そして、「5階かな」とエレベーターに乗る時、横田がさりげなく手を繋いできた。亜希子は顔が火照っているのが分かった。
彼も同じ気持ちだったようで、「久しぶりだね」と耳元で囁いてくれた。
それからというもの、月1回の監督会議が待ち遠しかった。
会場の文化会館までの往復は二人だけで過ごせる大切な時間。だから、待ち合わせ時間は会議の1時間前、帰りは遠回りして30分のミニドライブ。だが、互いに家族がいるって意識が、手を伸ばせばいつでも触れられるほど身近にいるのに、これ以上の関係になることを踏み止めていた。
そして12月、忘年会の季節。
「亜希ちゃん、来週の監督会議の後、忘年会があるから、出席でいいよね?」
いつもは会議が終われば、「もう少し彼と一緒にいたい」と思いながらも太一の待つマンションに帰えるのだが、今夜は違う。
「太一、ママ、今日はちょっと遅くなるから。鍵を締めて寝てなさい」
「うん、分ったよ」
その忘年会も午後9時には終わってしまったが、「亜希ちゃん、少し歩こうよ」と、横田もまだ帰りたくなかった。
酔い覚ましとは言え、12月の夜は冷え込んでいる。手を繋いで寄り添っているうちに、なんとなく妙な気持ちになってしまった。
偶然に再会した時、亜希子も横田も互いに頭の先から爪先まで相手を見つめていた。昔に戻りたい、そんなことは出来ないのは分ってはいたが、でも、心の片隅ではそうなりたいと互いに願っていたのかも知れない。
夫は遠い四国に行ってしまい、抱いてくれるのは年に数回だけ。女盛りの疼く体を慰めてくれるのは横田しかいない。今、その機会が巡ってきた。
亜希子はもう40歳を過ぎているのに、ラブホテルの門をくぐる時、心臓が口から飛び出すくらいドキドキし、部屋に入ると、膝が諤々と震えていた。
薄暗い間接照明に淡いブルーのベッドカバーが浮き立ち、そのベッドの枕元にはコンドームが……
「やっぱりダメ、こんなこと出来ないわ」と亜希子はドアに向かって掛けだしたが、「どうして俺と結婚してくれなかったんだ!」と横田がギュッと抱き止めた。
「えっ……」
「好きで、好きで、堪らない、亜希ちゃん!」
横田が泣いている……その瞬間、亜希子の心から「倫理」という言葉が消え散り、「亮ちゃん、亮ちゃん、私も、私もよ……もうイヤ、離さないで……」と感情が爆発した亜希子は血が逆流するように体が燃え出し、狂ったように横田の唇に吸い付いた。そして、横田が最後の一枚、パンティを脱がせようとした時、それは色が変わるほどにぐっしょり濡れていた。
20年数前とは違って、大人になった二人。
ほんのりと桜色の染まった肌、形は崩れかかってはいるが弾力のある乳房、それに子供を産んで少しふっくらとした下腹部、まさに女の盛りの亜希子の体。浅黒い肌に引き締まった体、長くて太いオチンチンは力強く勃起している横田。
「亜希ちゃん、いくよ」
横田が唇を重ねながら秘肉にオチンチンを挿し込んできた。
「あっ、亮ちゃん……」
亜希子の桜色の体と横田の引き締まった体がぴったりと合わさると、横田のチンチンが根元まですっぽりと亜希子の中に収まった。
二人の性器が滲み出てきた愛液で行き来が滑らかになると、横田の腰は「うっ、うっ!」とリズミカルに動き始め、亜希子は目を閉じたまま横田の手をぎゅっと握って反応してきた。
「ああっ、あっ、あっ、あっ、うっ、うっ、うっ、ああっ、あああっ……亮ちゃん……はぁはぁぁっ、ダメ、ダメ……」
夫との行為では自分をさらけ出すのが嫌で、声を出すのをいつも我慢していたが、今夜は違っていた。亜希子は全てをさらけ出し、恥かしい程に大きな声を出していた。
やがて、横田の腰の動きが速くなってきた。もうあの時のような子供じゃない。亜希子は彼の体に両脚を力一杯巻きつけて抱きついた。
「亜希ちゃん、お、俺……」
「亮ちゃん、私も、私も、あ、あ、逝く、逝く……」
横田は亜希子に腰をぶつけるように突き出すと、彼女の体をぎゅっと抱きしめながら射精した。20数年ぶりに亜希子の肉壺は横田の精液で満たされた。
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