人妻と高校生~秘め事と夫の死(第七章)

人妻と高校生~秘め事と夫の死 第七章 人妻と高校生~秘め事と夫の死

それからというもの、慶子は毎朝トイレに入ると、缶にいれた10円玉にジョロジョロ、ジョボジョボ、ジョー……と尿をかけ、表面にできた錆「緑青」を削り取り、それをビンに溜め込んでいた。

当時、緑青は猛毒であると考えられ、慶子はビンに溜まったものを眺めては、「これで緑青中毒に」と秘かにその時を待っていた。

そんなある朝、慶子は手にした新聞に「キノコによる食中毒発生!」と大きな見出しのついた記事が載っていることに気が付いた。

 「野生の毒キノコによる食中毒が発生したとして、県は注意喚起をしている。毒キノコの中には食べられるキノコと形や色が似て、区別がつきにくいものがあり、確実に鑑定された食用キノコ以外は食べないようにと呼びかけている。

  食中毒になったのは、毒キノコのツキヨタケを食べた一家5人。
  県によると、その家の40台の男性が山中でキノコ狩りをして採取、自宅でキノコをテンプラにして食べた1~3時間後、家族全員が激しい嘔吐と下痢に襲われたという。症状の重かった60代と40代の女性は入院しているが、それ以外の者は快方に向かっている。

  採取した男性は『シイタケ』と思ってしまったという。ツキヨタケはシイタケやヒラタケなどと間違えられることが多く、毒キノコの中でも食中毒の発生件数が一番多いという。誤って食べると、最悪の場合、死に至ることもある……」

10円玉のことは、所詮、邪魔だと思う夫への当て付けだった。だが、この記事を読んだ慶子は背筋がゾクゾクしてきた。

   今度、山菜摘みに行く時、その時に……

心臓の鼓動が激しく、顔は引き攣っているのが自分でも分る。
慶子は辺りに人がいないことを確かめると、その記事を切り抜いた。そして、掃除機の柄を握ったが、その手は震えている。

   でも、そんなことをする訳じゃないから……

そう思いながらも、慶子はツキヨタケのことが頭から離れなかった。

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