推し、誰にでも1人はいるであろう特別な存在。
当然私にもかつては推しがいて、私にとって彼はそんな言葉では括れないほど入れ込んでいた。
ブラック企業に勤めて摩耗していた精神を、現実に戻して回復してくれた彼は神様のような存在。
今思えばガチ恋と呼ばれる分類のファンに値するのだろうが、当時の私は自覚が無く普通に推しているだけの認識だった。
とはいえ数々の推しを数年間で転々としてきていた私はモラルもあり、自分で言うのもなんだが厄介なファンではなかったと思う。
ただ、1回だけ自分の中でずっと引っかかっている出来事があった。
それは推しをオカズにオナニーをしたことである。
今まではエッチな漫画を見たりAVを見たり玩具を使ったりしていたのだが、マンネリが来たのか時間がかかるようになった。
ムラムラしながらフォルダやサイトを漁っていた時、ふと目についたのが推しの写真だった。
その写真がいつもよりもセクシー路線だったのが運の尽きだったように思う。
ちょっとはだけていて事後を想起させるような推し、無自覚ガチ恋だった私は彼に抱かれたらと瞬く間に想像をしてしまった。
「んっ……んん……っ」
推しの名前を呼びながら、まるで彼に触られているかのような妄想をして自分を満たす。
彼だったらクリをこんな風に触るのかな、胸を焦らすように触られたらどうしよう。
「あ、あぁっ、ぁ……ん……っ、は、……!」
そう考えるだけでぐしゃぐしゃに濡れてしまい、ここ最近では玩具を使わないとイけないことが多かったのに、指だけでいつもより早く深くイってしまった。
終わってだらしなく手を垂らしながらはぁはぁと息を切らす内に、段々と理性の帰ってきた頭の中に浮かぶ一抹の罪悪感と虚しさ。
推しにも相手がいてこんなことをしていたらと思うと悲しくなったし、向こうからしたら顔も名前も知らない私にオカズにされる推し。
彼の顔を見る度にそれが過ぎってしまって見ていられず、それから数日後に身勝手な理由で担降りすることに。
SNSで繋がった他のファンから何でと聞かれたものの本当の理由は答えられず、新しい推しが出来たとか仕事で余裕が無いとか色々理由を作成。
それからまたオカズにしてしまいそうで新しい推しも作れないまま今に至り……。
でもなんだか推しが居ない人生には彩りがないから、また推しを作ろうかなと思うようになった。
ガチ恋気質が発覚した今、今度は気軽に繋がれそうな、過疎配信者とか地下アイドルとか好きになろうかなと思ってしまう身勝手な自分が嫌になりながらも、ネットの海に飛び込む毎日だ。
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